グリーンレーズンはなぜ緑色?|トルファンに受け継がれる陰干しの知恵
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黄緑色のグリーンレーズンを、濃い茶褐色や紫褐色のカリフォルニアレーズンと並べると、同じ果実から作られたとは思えないほど、色合いが異なります。
ところが、カリフォルニアレーズンの多くも、原料は黄緑色に熟したぶどうです。似た色のぶどうから、まったく違う色のレーズンが生まれるのはなぜでしょうか。
その理由には、産地の自然環境と製法が関係しています。
前編では、レーズンやナッツがシルクロードを旅する人々の携帯食になった歴史をたどりました。今回は、この色の謎を切り口に、トルファンの自然と当地に受け継がれる独特な乾燥方法の仕組みをひもときます。
海より低い灼熱の盆地、トルファン
トルファンは、新疆東部、天山山脈の南麓にある砂漠のオアシスです。
盆地の最深部にあるアイディン湖は、海面より約154メートル低い場所にあります。トルファン盆地は世界でも有数の低地で、夏には最高気温が49℃を超えることもある灼熱の土地です。
雨は少なく、日照時間は長い。真夏には地面からも熱気が立ちのぼり、街全体が強い光にさらされます。
この雨の少ない土地でぶどう栽培を可能にしてきたのが、天山山脈の雪解け水です。その水は「カレーズ」と呼ばれる地下水路を通り、強い日差しによる蒸発を抑えながら、畑や集落まで運ばれます。トルファンでは、地上の灼熱と地下を流れる冷たい水が、同じ大地に共存しているのです。
長い日照時間はぶどうをよく熟させ、乾いた空気は収穫後の果実を乾かすのに適しています。こうした気候が、トルファンのぶどう栽培とレーズン作りを支えています。
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風を誘うレーズン工房「陰房」
トルファンを訪れると、乾いた大地のあちこちに、四角い土色の建物が立っていることに気づきます。
窓らしい窓はなく、壁一面に無数の穴が開いています。遠目には墓所や宗教施設のようにも見え、初めて目にすると、どこか近づきにくい印象を受けます。
しかし、建物の中に吊るされているのは、数え切れないほどのぶどうの房です。これは「陰房(いんぼう)」と呼ばれる、レーズン作りのための乾燥小屋です。
陰房は、土を練って固めた日干しレンガで造られています。
壁に並ぶ四角や十字形の穴は、装飾ではありません。外の風を室内へ通すための風穴です。
陰房の多くは、丘の斜面や開けた土地など、風が通り抜ける場所に建てられています。壁の穴から入ったカラカラに乾いた空気は室内を巡り、反対側へ抜けていきます。
内部には木の棚や竿が組まれ、収穫したぶどうが房のまま吊るされます。薄暗い室内では、風穴から差し込む細い光の中に、幾列ものぶどうが浮かび上がります。
陰房は、強い日差しを遮りながら、風を室内へ招き入れます。トルファンの自然条件を巧みに生かし、ぶどうをレーズンへと変えていく乾燥施設であると同時に、この土地で暮らしてきた人々のたくましさや知恵を今に伝える象徴的な建造物です。
日差しを避け、風にゆだねる
前処理を行わず、ぶどうをそのまま陰房に吊るす伝統的な方法では、乾燥におよそ30日から40日、気象条件によっては50日ほどかかります。
風が房と房の間を通り、果実から少しずつ水分を抜いていきます。みずみずしかった実は次第に小さくなり、甘みや酸味、ぶどうらしい香りも凝縮されます。
一般に、4〜5キログラムの生ぶどうから、およそ1キログラムのレーズンができます。その過程で、味や食感は大きく変わります。
現在は、ぶどうをアルカリ性の水溶液に短時間浸し、果皮表面のろう質の膜を変化させて、乾燥しやすくする前処理が広く行われています。この処理を施すと、陰房では15日から25日ほど、天日乾燥では1週間から10日ほどで乾くとされています。ただし、実際の日数は、気温や風、ぶどうを吊るす密度などによって変わります。
市販品は、陰房を出た後にも選別や洗浄などの精製加工を経ます。殺菌や熱風による仕上げ乾燥を組み合わせる場合もあり、工程は製造者や製品によって異なります。
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二千年のぶどう文化に起きた、陰房という乾燥革命
トルファンでは、二千年以上前からぶどうが栽培されてきました。
古代のトルファンでは、ぶどうを日光の下に広げたり、房を蔓に残したまま乾かしたりしていたと考えられています。そうして作られたレーズンは、今日のグリーンレーズンより赤褐色に近い色をしていました。
この長い歴史の中では、陰房によるグリーンレーズン作りは比較的新しいものです。しかし、その登場は、トルファンのレーズン作りにおける画期的な技術革新だったといえます。日差しを遮りながら乾いた風だけを通すことで、天日乾燥では得にくかった黄緑色のレーズンを作れるようになったからです。しかも、日干しレンガと風を利用する簡素な仕組みで、陰房そのものは燃料や複雑な設備を必要としません。
通風式の陰房が史料に現れるのは19世紀です。その前半には、ぶどう畑の空いた場所や住居の屋上に、風を通す隙間を設けた小屋が造られるようになりました。
19世紀末になると、陰房は、空気がより乾き、風通しのよい畑の外や丘陵に建てられるようになり、次第にいまの姿へと近づいていきます。
同じ頃、中央アジアを調査したロシアの探検家グリゴリー・グルム=グルジマイロは、トルファンのレーズンを世界でも屈指のものと高く評価し、この独特な乾燥小屋にも目を留めています。
グリーンレーズンとカリフォルニアレーズン、色を分けるもの
切ったりんごやバナナをしばらく置いておくと、表面が茶色く変わることがあります。果実の成分が酸素に触れることなどで起こる、この色の変化を「褐変」といいます。
日本国内でよく目にするカリフォルニアレーズンの多くも、原料は熟すと黄緑色になるトンプソン・シードレスです。カリフォルニアでは、多くのぶどうが畑に敷いた紙の上などに並べられ、日光の下で乾かされます。
その間に、緑色のもととなるクロロフィルが減少し、光や熱の影響も受けて褐変が進みます。その結果、黄緑色だった実は、濃い茶褐色や紫褐色のレーズンになります。
一方、トルファンの伝統的なグリーンレーズン作りでは、ぶどうを陰房に吊るし、直射日光を避けながら風を通して水分を抜いていきます。クロロフィルが残りやすく、褐変もゆるやかに進むため、原料であるぶどうの黄緑色が保たれます。
また、果皮への前処理で乾燥時間を短くすることも、色の変化を抑える一因となっています。
レーズンの色は、原料となるぶどうの品種だけでなく、乾かし方によっても決まります。両者の色合いには、それぞれの産地で発達した乾燥法が表れています。
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一色ではない「緑」
グリーンレーズンにも、鮮やかな緑、明るい黄緑、落ち着いたオリーブ色など、さまざまな色合いがあります。
品種や熟し具合、収穫年の気候に加え、前処理の有無、干している間の温度や風、完成までの日数によっても色は変わります。
香りや食感も一様ではありません。酸味が際立つもの、花やマスカットを思わせる香りを持つもの、やわらかなもの、噛むほどに濃い甘みが広がるものがあります。
色や粒のわずかな違いは、着色によるものではなく、ぶどうそのものと乾燥条件が生み出す個性だと、私たちは捉えています。
数あるトルファンの実りから、SUNOMAが扱う二種類
トルファンでは、品種や大きさ、色合いの異なる多様なグリーンレーズンが作られ、さまざまな名称で流通しています。
その中で、SUNOMAが扱っているのが「緑宝石」と「緑香妃」です。
「緑宝石」は、日本で広くグリーンレーズンとして親しまれている、代表的なタイプです。形と大きさはピーナッツほどで、やさしい甘みと爽やかな酸味、ぶどうらしいフルーティーな香りが調和しています。
「緑香妃」は、緑宝石よりひと回り以上大きいLサイズの高級品です。ふっくらとした粒はしっとりやわらかく、濃い甘みと深い旨味のあとから、すっきりとした酸味が立ち上がります。
いずれも塩、砂糖、油、香料、着色料を加えていません。コーヒーや紅茶のおともにするほか、チーズを添えてワインに合わせても楽しめます。二種類を食べ比べると、サイズや風味の違いがよく分かります。
高原くるみとグリーンレーズンを組み合わせた「シルクロード実っくす」では、果実の甘酸っぱさと木の実の香ばしさを一緒に味わえます。