世界の珍しいナッツ6選|日本ではまだ知られていない木の実を巡る

世界の珍しいナッツ6選|日本ではまだ知られていない木の実を巡る

アーモンド、カシューナッツ、くるみ、ピスタチオ。日本でナッツとして親しまれているものは、世界にある木の実のごく一部です。

旅先の市場を歩けば、見たことのない殻や、不思議な名前を持つナッツに出会うことがあります。現地では日常的に食べられているのに、日本にはほとんど入ってこないものも少なくありません。

ここでいう「珍しいナッツ」には、生産量が少ないものだけでなく、育つ地域が限られるものや、産地ではよく知られていても、日本では流通量の少ないものも含まれます。

今回は、世界各地の食文化に根づく6種類と、番外編として西ヒマラヤ周辺の松の実を紹介します。

「ナッツ」は植物学上の分類名ではありません。ここでは、植物としての分類にかかわらず、食文化や食品流通の中でナッツとして扱われる食用の木の実や種子を紹介します。

1.フィリピンで親しまれる、ピリナッツ

細長い姿をしたピリナッツは、フィリピン原産のピリという樹木から採れる種子です。この樹木には「フィリピンカンラン」という和名もあります。なかでもルソン島南東部のビコール地方は、代表的な産地として知られています。

果実の中には非常に硬い殻があり、それを割ると、仁(じん)と呼ばれるクリーム色の食用部分が現れます。フィリピンの品質規格では、良品の仁は穏やかなナッツ香をもち、やわらかく噛みやすい一方、軽い歯切れを備えるとされています。ローストするとコクが引き立ち、なめらかな口あたりを楽しめます。

フィリピンでは菓子や土産品にも使われる、身近な食べ物です。日本でも一部の専門店や通信販売で扱われていますが、一般の売り場ではまだ馴染みの薄い存在です。

世界的に存在が珍しいというより、産地と消費地が限られているナッツといえるでしょう。

ピリナッツ SUNOMA
フィリピンではポピュラーなピリナッツ


2.大きな松かさから生まれる、ブンヤナッツ

オーストラリア東部に自生するヒロハノナンヨウスギは、英語で「Bunya pine(ブンヤパイン)」と呼ばれます。その巨大な松かさの中に並んでいる食用種子が、ブンヤナッツです。

松かさは数キログラム、なかには10キログラム近くに達するものもあります。そこから採れる種子も、ふだん目にする松の実よりはるかに大きく、一粒ずつに存在感があります。

ブンヤナッツは脂質よりもでんぷんを多く含み、ゆでる、焼く、蒸すといった方法で食べられてきました。ゆでると、しっとりしたじゃがいものような食感になり、風味は栗に近いとされています。粉にしてパンや料理に使うこともできます。

オーストラリア先住民の人々にとっては、単なる食料ではありませんでした。ブンヤの実がなる季節には人々が集まり、食事や交流の時間をともにしたと伝えられています。

カリッとしたナッツのイメージを大きく変えてくれる、でんぷん質の木の実です。

3.ブラジルのサバンナが育てる、バルーナッツ

ブラジル中央部には、「セラード」と呼ばれる広大な熱帯サバンナが広がっています。この土地に自生するバルーの果実から採れる種子が、バルーナッツです。現地名は「castanha de baru(カスターニャ・デ・バルー)」、英語名は「baru nut」です。

硬い果実の内側には、一粒の細長い種子が収まっています。一般にはローストして食べ、ピーナッツを思わせる香ばしさと、しっかりした歯ごたえが特徴です。現地では菓子や料理にも使われています。

長く地域の食べ物として利用されてきましたが、近年はブラジル国外でも、食用ナッツとして知られるようになってきました。2025年には、ローストしたバルーの種子について、「第三国由来の伝統食品」としてEU域内での販売が認可されました。

国際的な流通が始まりつつある一方、日本ではまだ目にする機会の少ないナッツです。古くから食べられてきた木の実が、いま新しいナッツとして世界に紹介されている。その過程にあることも、バルーナッツの面白さです。

なお、日本で「ブラジルナッツ」と呼ばれて流通しているものは、バルーナッツとは別の樹木から採れるナッツです。

4.ヘーゼルナッツとは別の木の実、ゲビナ

ゲビナ(Gevuina avellana)は、チリ中南部を中心に、アルゼンチン側の一部にも分布する樹木です。その種子には「チリヘーゼルナッツ」という別名があります。

名前にヘーゼルナッツと付いていますが、ヨーロッパなどで栽培されるヘーゼルナッツとは別の植物です。むしろマカダミアナッツと同じヤマモガシ科に属しています。

丸い果実は成熟すると黒に近い色へ変わり、その内側に食用となる種子があります。ローストした試料の比較研究では、香りはヘーゼルナッツに近く、マカダミアより甘みが控えめで、噛み応えのある食感と報告されています。

現地では森から採集した実を煎り、間食や料理に利用してきました。ただし、国際的な流通は限られ、日本では食用ナッツとしてほとんど見かけません。

産地では食べ継がれながら、遠く離れた日本には届いていない。ゲビナは、そうした地域の木の実を象徴する存在です。

5.二千年の栽培文化を持つ、中国の香榧

中国には「香榧(シャンフェイ)」と呼ばれる木の実があります。そのもとになるのは、和名でシナガヤ、英語で「Chinese torreya」と呼ばれる樹木です。香榧は、その中から食用に適したものを長い年月をかけて選抜してきた品種です。

代表的な産地は、浙江省の会稽山周辺です。この地域では二千年以上にわたって香榧が育てられ、樹齢千年を超えるとされる古木も残されています。

収穫した種子は、すぐに完成品となるわけではありません。収穫後に一定期間置いて後熟させ、殻や表皮を処理し、焙煎するなど、いくつもの工程を経て食べられるようになります。仕上がった仁は香ばしく、カリッとしたあとにほろりとほどける軽い食感です。名前に使われている「香」の字が示すように、煎ることで独特の芳香が引き出されます。

香榧は中国では地域を代表する特産品ですが、日本でその名前や味を知る人は限られています。

香榧(シャンフェイ) SUNOMA
香榧(シャンフェイ)の幼実


番外編|西ヒマラヤ周辺で珍重される松の実、チルゴザ

パキスタン、アフガニスタン、インド北西部の山岳地帯には、チルゴザパインと呼ばれる松が育っています。この松から採れる細長い種子が、チルゴザ(Chilgoza)です。「チルゴーザ」と表記されることもあり、アフガニスタンでは「ジャルグーザ(Jalghoza)」の名でも知られます。

殻付きのままローストし、殻を割って中の仁を食べるのが一般的です。日本で流通する松の実より細長く、口あたりはなめらか。穏やかな甘みと、松の実らしいコクがあります。現地では贈り物や人が集まる場にも用いられています。

チルゴザは、すでに国際的に取引されている食用ナッツです。一方で、その森林は険しい山地にあり、採集方法によっては樹木を傷めることがあります。近年は地域の収入を守りながら森林を次世代へ残すため、収穫方法の改善や、現地での選別、焙煎、包装を進める取り組みも行われてきました。

日本でもごく一部の専門店で購入できますが、日本でよく見かける松の実とは産地も種類も異なる、まだ馴染みの薄いナッツです。

6.中国・天目山周辺で育つ、高原くるみ

中国東部には、中国で「山核桃」と呼ばれる、くるみの仲間が生育しています。私たちが普段食べているくるみと同じクルミ科ですが、別の種類です。

なかでも浙江省臨安を含む天目山周辺は、代表的な産地です。山地の斜面で育ち、硬い殻の中に小さな仁を実らせます。

SUNOMAでは、この山核桃を「高原くるみ」と名付け、商標登録のうえ販売しています。

小粒ながら、素焼きにすると軽快に砕け、香ばしく濃厚なコクが広がります。ウォールナットと比べて渋味やえぐみが穏やかで、ピーカンナッツにも通じる味わいです。

中国ではよく知られた木の実ですが、日本の一般的な売り場では、まだ馴染みの薄い存在です。「くるみ」という身近な名前を持ちながら、私たちが普段食べているカリフォルニア産などのくるみとは、姿も味わいも異なります。

 

高原くるみ SUNOMA
高原くるみは浙江省の天目山周辺のみに生育している


世界には、まだ知らない木の実がある

インターネットを通じて世界中の情報を瞬時に得られる今も、ある土地では日常的に食べられながら、その外ではほとんど知られていない食品があります。ここに挙げたナッツも、その一例です。

形や味だけでなく、育った土地や食べ方に目を向けると、「ナッツ」という身近な言葉の向こうに、それぞれの地域が育んできた食文化が見えてきます。

今回紹介した中で、SUNOMAが取り扱っているのが高原くるみです。

シルクロード実っくすでは、素焼きの高原くるみと、トルファン産のグリーンレーズンを仕切りで分けて詰めています。食べる直前に二つを合わせることで、高原くるみのカリカリ、サクサクとした歯ざわりと、レーズンのもっちり、しっとりとした食感を一緒に楽しめます。

日本で味わえる一粒を入り口に、世界の木の実の広さと奥深さを感じていただければと思います。

高原くるみ(山胡桃)の樹 SUNOMA
高原くるみ(山胡桃)の森


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